いつもの日々

わたかぜの忘備録。映画、アニメ、小説などの感想をメインに

やる気はないがやらないといけない時に

これをやらなければ生きている価値が無いと思ってずっとやってきたが、数年前とうとう疲れ果て辞めてしまった事がある。

最近またそれをどうしてもやらなければならない事態になったのだが悲しいかなやる気が出ない。数年前はあれほどやる気があったのに。今回は結局最後までやりきることができなかった。今後同じような事が起こらないようここに記す。

 

・やる気がないのなら最後にまとめてやろうとするな。計画を念入りに立てろ。

自分の能力に自信がある場合ならこの限りではないが、自信がないのなら無計画なのはできる限り避けるべきだ。常に最悪を想定して計画は立てるもの。数年ぶりに取り組んだためブランクがきつく最後に地獄を見る羽目になった。

 

・順調に行かなくなった時はすぐ人に相談する。

進捗が少しでも遅れたら人に相談すべし。これをやらないと1人で延々とループにハマり時間を無駄にする。やる気がないのにだらだらやって時間を無駄にする事になったら最悪だ。

 あと相談する相手もピンキリだからそれを考えて相談内容も決めるべき。じゃないと時間を無駄にする。

 

上記2つすらできないようならすぐに諦める。

上2つすらできない程度のやる気だともう自分の場合は結果が7割見えている。だらだらやっても良い事はない。すっぱり諦めて他のことに全力を尽くす。

負のスパイラル

一回ハマるとなかなか抜け出せない。負のスパイラル。

何と無くやる気が出なくて放置してるとリミットが来てout。そこから頑張れば挽回できるけれどもそんなしんどい事はしたくない。だらだらしてたら本当のリミットが来てゲームオーバー。

 

こんな事を2度繰り返して今3度目なんだけれどもこれで決めなければ本当にまずい。ストックが無くなった。

ゲームオーバーが癖になっている。なんとか抜け出そうともがいているものの、このままダラーっと過ごして良いんじゃないかと思っている自分が何処からか湧いてくる。

だらだらしていてもいいからやれば良いのは重々承知している。本当にわかっている。分かっていても身体は動かない。

本当にわかっているのか?根源的な部分でなんとかなると漠然と思っているのではないか。別に文字通り死ぬわけじゃないしと思っているせいか。一度地獄を見ないと変われないのか。

まだギリギリ生還できるラインにはいる。今から少しでもいいから進めなければ。取り敢えず明日までに何処まで進められるかが勝負所

2017年で印象に残ってるアニメ

大分久しぶりの記事になる。

と言っても忘備録的なものだ。

 

年末ということもあり、今年を振り返る意味で印象に残ったアニメを書いておこうと思った。

本当は話数単位で選ぶ今年のアニメ10選とかしたかったが、今年は1話1話真剣に見てたアニメが少なかったのでそれはやめた。

 

アニメを評価する基準を改めて考えて見たけれど、私は好きなキャラができるかどうかで半分決まる。好きなキャラは男でも女でもどちらでもいい。残りの半分は、ストーリー、世界観、演出、アクションシーン、OP/ED、劇伴の要素が加わってくる。

なのでキャラやストーリーの好みが合う人ならここにあげるアニメは刺さるアニメだと思う。

 

 

ボールルームへようこそ

釘宮さん回が好きだ。あと諸星すみれさん

 

リトルウィッチアカデミア

13話の涙で画面がぼやけていく〜からのロッテとスーシィ登場!!!!の場面

 

プリンセスプリンシパル

5話のアクションぬるぬる動く

 

魔法使いの嫁

原作が最強。ここ数年で五本の指に入る漫画。映像化されてもおもろい。

 

ノラと皇女と野良猫ハート

原作やってないとおもろないかも。

想像を超えていくアニメ。

 

エロマンガ先生

和泉家の妖精。紗霧ちゃん。

 

小林さんちのメイドラゴン

トールと小林のイシュカンコミュニケーション

 

冴えない彼女の育て方

7話終盤から8話の倫也と恵の仲直り回が最高。

 

昭和元禄落語心中

少女終末旅行

 

他にも色々面白いのはあったけど10個あげるならこれで。

メイドインアビスは面白かったけど原作先に読んでたから衝撃が薄れてしまった。

Just Because!やNEW GAME2期、フレームアームズガールとかも毎週楽しみに見てました。

宝石の国いつだって僕らの恋は10センチだった。は見たいけどまだ見れてないので、時間作って一気に見るつもり。

 

くそったれな幻想世界―― 『CHAOS;CHILD』(カオスチャイルド) 感想 TRUEルート

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妄想科学ADV「CHAOS;CHILD」Official Website

 

現在アニメ放送中のカオスチャイルド。妄想科学アドベンチャーシリーズの第4作目です。
原作がセール中で2000円。安さに釣られやり始めたらめちゃくちゃハマってしまい、ずっとやってました。シリーズの中でプレイしたのはシュタゲだけですが、カオスヘッドはアニメの方を見てたので今作の世界観はちょっと懐かしかったです。ipadiPhoneだと好きな体勢でプレイできていいですね。以下感想。ネタバレ注意。

 

 

尾上世莉架

「私から、"目的"を奪わないで!
生まれてから、いろんな人の心を読んできた!みんな悩んで、迷ってる。
それでも生きてるのが信じられない!
なんで笑ったりできるのっ?それが何のためか、自分でわかってないのに!」

―over sky end 11章

尾上世莉架は宮代拓留のイマジナリーフレンド。彼女の至上目的は拓留にやりたい事を与え、それを叶えさせること。その為に現実の世界に生み出された。

世莉架は拓留を肯定する為の存在。年下でアホっぽいのも拓留が"情強"なのを肯定するため。だから決して彼を否定するようなことはしない。

over sky end√終盤の彼女や誕生した理由だけ見てるとロボットみたいだが、彼女にもちゃんと人としての感情は存在する。その感情が爆発したのが上記の台詞。

TRUE√を終えた後だとさらに見方が変わる。彼女はカオスチャイルド症候群に罹っていなかった。そんな中で過ごしていた彼女の心情を想像できる屈指の名場面。

 

宮代拓留が情強にこだわる理由
そもそも情強、情弱とは何なのか。ある情報が本当に正しいかどうかは関係なく自分が望む情報だけを信じるのが情弱。情強とは常に正しい情報を追い求める存在。

拓留が情強であるのに拘り始めた原因は幼少期にある。親からネグレクトされており、強い孤独や劣等感を抱えていた。イマジナリーフレンドに傾倒していたのもそのせい。自分を愛してくれる、肯定してくれる存在に飢えていたのだ。そこで、周りの子供達と違って両親に愛されていないのは自分が"特別"だからと思い込む事で現実を乗り切ろうとした。辛い現実を受け止めきれなかった。だから拓留は自分が"特別"であることに異常に拘る。その"特別"である身近な存在が"情強"だったのだろう。

 

ニュージェネの再来事件の犯人が世莉架だったのを知った時の衝撃たるや。
拓留は自分が情強であるとずっと思い込んでいたが、いつも身近にいた幼馴染が何を考え、何を思っていたのかさえ全く分かっていなかった事実に打ちのめされる。彼女の言動は全て自分の願いに基づいた物で、彼女は全て拓留の為だけに行動していた。結衣が死んだのも乃々が死んだのも大元の原因は自分。拓留は自分が願った事を忘れ、世莉架を表面上の言動のみで判断していた自分の愚かさを知る。そして自分が情弱であったことに気付きそれを受け入れた。
だからカオスチャイルド症候群から帰還できた。

 

劣等感を持っているがそれを受け入れられず、自分は特別だと思い込む。自分は優れていると思い込み幻想の世界を作り上げる。そんな事をしても現実世界の自分は何も変わらないというのに。
拓留の作る幻想世界は極端だったが、大なり小なり自分に都合の良い幻想世界を作る経験は多くの人が持っているのではないだろうか。だからこそ拓留と世莉架の別れは悲しいが、尊く希望を感じる清々しい物になったのだ。

 

・雑感。

over sky endのラストについて。世莉架は”普通の幼馴染”として拓留に再構成され、カオスチャイルド症候群から帰還した拓留と逃避行。Happy End。TRUE√のラストと真逆なEND。というのが私の解釈なんですが、これだと警察の警備をどうやって突破したかがわからないんですよね。二人とも能力がない筈なのに。

それにしても事件の真犯人や、カオスチャイルド症候群の真実など二転三転するシナリオすごく楽しめました。同じようなゲームだとナツユメナギサやリトバスがありますけどあれらに匹敵する面白さでした。

ノベルゲーってアニメや映画、小説と違って掛ける時間が数倍以上なので、作品に対するのめり込み度合いもその分深くなってすごい面白い。しばらくはカオスチャイルドロス症候群のまま過ごすことになりそうです。

響け!ユーフォニアム2 第11話 「はつこいトランペット」 感想 麗奈の力強さ

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9話で滝先生の机に置いてある写真から終に奥さんの存在に気付いてしまった麗奈。

今回は麗奈の初恋が終わってしまうお話です。

一応9話から伏線が張ってあったとはいえ、30分で失恋から立ち直った麗奈の力強さには憧れます。

麗奈の揺れ動く瞳が何度も出てきて印象的な回でした。

 

・悲嘆(mourning)の4段階

人は愛する対象(家族や恋人、友人など)の喪失に直面した時、深い悲しみに襲われます。喪失とは死や生き別れの事です。もちろん失恋も。精神分析学者のジョン・ボウルビィはその時の心的プロセスを4段階に分けて説明しています。

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)のモーニング(喪)の四段階論と対象喪失の受容と回復]: Keyword Project+Psychology:心理学事典のブログ

簡単に言うと、

① 混乱、否認

② 怒り、執着

③ 絶望、抑うつ

④ 再建、離脱

の4段階となっています。数字順に気持ちが変化していく。

11話はこの4段階を綺麗にまとめています。

 

・大吉山再び

新世界より」を吹いた時以来の麗奈の絶叫。抑えきれない気持ちを受け止めるのはやはり久美子の役割です。

夏祭りの時は連星が輝いてましたが今回は満月。麗奈が一人で悲しんでいたのが伝わってきます。

この1期を彷彿とさせる演出、久美子と麗奈が春からずっと一緒に過ごしてきたの感じさせます。最後の久美子の腕時計はその時間の象徴。

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”怒り”という感情は理屈ではなかなか説明できない事もあるとても人間らしい感情です。

 麗奈は怒っていましたが、それがちゃんと自分勝手なものだと分かっていました。けれども自分ではどうしようもなかった。

だから久美子が傷つけたくなかったからと言った時、麗奈は知ってたと返します。

久しぶりの会話。

久美子は麗奈が傷付いてたのを知り、麗奈は自分の動揺や不安を素直に久美子に語っていきます。

麗奈は山頂でこう語っていました。

私さ、自分の弱さにびっくりした。

奥さんが居たって聞いたとき、ヤバいくらい動揺して。

私、何で気付けなかったんだろう。

お母さんにも何で今まで何も教えてくれなかったのって八つ当たりして。

彼女は奥さんの話を聞いた後、混乱してそれが母や久美子への怒りに変わって行ったのです。そして大吉山での久美子とのやり取りは怒りから絶望、抑うつへと至る過程となります。

 

・集中できない麗奈

過去の思い出に浸っていた麗奈を引き戻すのは滝先生が手をたたく音。ここでも時計やメトロノームと言った時間(過去)を感じさせる物が出てきます。今回は時間が一つのキーポイントです。

 

あれだけ完璧な麗奈が演奏に集中できていない。彼女は自分の気持ちにまだ整理がつかず、落ち込んでいるのです。絶望とまでは行ってないと思いますが、軽いうつ状態です。

優子先輩が心配して声をかけますが、悩みを打ち明けることはない。麗奈が本音を打ち明けるのは久美子だけ。

 

・滝先生とのやりとり

ここから再建段階へシフトしていきます。

 

この状態を脱するには奥さんを受け入れるしかない。

そのためには奥さんがどんな人物だったのかを知らなければならない。麗奈は傷つくのを承知で滝先生に直接聞きに行きます。滝先生の奥さんの事をとても懐かしそうに話す様子から、今でも彼の中では奥さんが大切な存在として”生き続けている”のが分かります。彼が奥さんの事について何か話す度、あの橋の上の時と同じ腕時計が視界に入る度、麗奈は傷ついたでしょう。

 

立ち直るために一度それまでの自分の思いを全部壊して、一から作り上げていく。とても麗奈らしいまっすぐなやり方。

 

・お墓参り

気持ちの整理がついた麗奈はとうとう滝先生の奥さんのお墓参りをします。

お墓参りは勿論奥さんに会いに行く為ですが、これまでの自分との別れを象徴するシーンでもあります。

新山先生から無理言って聞き出してくる行動力。つくづく麗奈らしい。

私、前から思ってたの。

どうしてもっと早く生まれてこなかったんだろうって。

私だけ時間が進むのが早ければいいのにって。

早く大人になって滝先生に追いつけばいいのにって。

時間は皆平等に与えられる。一人だけ早く進める事なんてできない。それも表すためのあの腕時計だったんでしょうね。

 

雲は晴れ、朝日が差し込む。

初恋は終わり、ここから麗奈の新しい曲が始まるのです。

 

・雑感

小学生の麗奈可愛いいいいいいいい。帽子をちゃんとかぶってるのが育ちの良さを感じさせてgood!まさかここまで遡ってくれると思ってなかったから超嬉しかったです。

あすかが成長してるのも見られたし、優子の優しさもしっかり見れて良い回でした。

「この世のすべての不利益は当人の能力不足」 この言葉の魅力と欠点

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『東京喰種』のヤモリの言葉です。この言葉は、7巻でヤモリが主人公を監禁している時に出てきます。第2部の:reでも今度は琲世から同じ台詞が出てきます。ヤモリは自分の拷問経験からこのことを学びました。

残酷だけどかっこいい魅力的な言葉です。

 

・喰種の世界

このマンガを読んでる人は知ってると思うんで飛ばしてもらって大丈夫です。

 

東京喰種の世界では人間を餌にしている喰種と呼ばれる怪人が存在しています。彼らは人肉しか食べない。

喰種は姿形は人間そっくりなのですが、赫子と呼ばれる捕食器官がありこれを使って人間を殺します。基本的に目が赤いです。また筋力は普通の人間の数倍以上。肌も硬いし俊敏性も人間を超えています。銃を持った人間でも余裕で殺せます。

しかし喰種は人間の数に比べとても少ないです。なので喰種ということがバレると、CCGという喰種討伐集団にリンチされ殺されてしまいます。人間は捕食対象でありながら敵なのです。

喰種同士では基本仲が悪い。身内以外は敵といった感じです。彼らは自分の狩場を持っていて、基本的に食事もその狩場の中だけで行います。これは餌の奪い合い(殺し合い)といった無駄な争いを避けるためでしょう。人間にバレたらCCGに殺されますし。また共食いする喰種もいるため仲が悪いのは仕方ないでしょう。

 

 

 なので喰種の世界は弱肉強食の世界です。仲間同士での餌の取り合い、人間との殺し合い。戦闘力の高いものが生き残りやすい世界。

 

・頼れるのは自分のみ

そんな世界で頼れるのは誰でしょう?知らない奴は全部敵、信じられるのは身内のみ。家族がいても大抵は人間に襲われ離散している喰種が多い。長く同じ仲間と居られる世界ではないです。結局どんな時でも頼れるのは自分だけ。

 

喰種の世界は人間の世界と違って"社会"が存在しません。弱者は堕ちるとこまで堕ちて行き最後には死ぬ。生活保護がある日本とは全然違います。

逆に強者なら何でもできる。基本的に戦闘力さえあればOKな世界なので、自分の思うがままに出来ます。学校なんて行く必要が無いし金なんていらない世界。

 

故に喰種の世界での不利益は「すべて」当人の能力不足から来るのです。なんでも自己責任の社会。

1部の第7巻でこの真理を受け入れ、これまでの自分の考えを捨てる覚悟を決めた金木研は覚醒します。

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・では人間の世界ではどうか?

人間の世界でもこれは大体あっています。

しかしこれは強者のための言葉です。

 

頑張って自分を成長させたら報われますよと。

また強い人がこの台詞を言うと、自分の能力に裏打ちされた絶対的な自信が滲み出て凄いかっこいい。魅力的な台詞になります。自分も強者になって言ってみたい。そう思わせられる言葉です。

 

けれども世の中には頑張ってもあるレベル以上には成長できない人が大勢います。

そんな人たちにはこの言葉は無意味です。

何しろ能力を上げられない以上不利益をどうすることもできないのですから。強者と異なり不利益な状況は何も変わりません。

 

能力のないものは不利益を受け入れろ。そういう何でも自己責任の社会はよくありません。良くはないけど間違いでは無いからタチが悪い。

自己責任感が強い人は、何かあった時に悪いのは自分だと思いこみます。自分を責めることはいわば自分の否定。それは強いストレスになります。

強いストレスに長時間かけられ続けると、人は無気力になってしまうそうです。脳内の神経伝達物質が減少してしまうからと考えられています。

そうしてうつ病を発症してしまうこともある。

だから精神が弱い人にも向いてない社会です。

 

自己責任の社会は強者にとっては素晴らしい社会です。しかし能力が低かったり、精神が弱い人には生きづらい社会なのです。

東京喰種の世界はこの考え方で一貫していて非常に冷たく尖った世界になっています。中二病的な世界観が好きな人には是非とも読んでほしい作品です。

アニメがあるのでそっちから入ってみてもいいかも。

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響け!ユーフォニアム2 第10話 「ほうかごオブリガート」 感想 本音と建前

あすか先輩が遂に部活に戻ってきました!麻美子さんの問題も解決し、やっとひと段落して落ち着いたのを感じています。EDのヴィヴァーチェが染みる染みる。

6話から始まり10話まで、とても楽しい1ヶ月でした。

 

前回9話ではあすか先輩は久美子を家に招き、自分の家の事を打ち明けました。

久美子はそれでもあすか先輩が好きだといい、あすか先輩は救われたのです。

 

そして10話ほうかごオブリガート

久美子を家に呼びましたが、依然として部活を辞めるという心は変わりませんでした。

オブリガートは演奏上不可欠な助奏の事で、台所での麻美子とのやりとりを指しています。あすか先輩という主旋律に対して久美子が本音をぶちまけられたのは麻美子との会話があったからなのです。「後悔のないようにね」という姉の言葉が久美子を後押ししました。

 

麻美子が家から出て行くのを久美子は寂しいと思っているのに、素直になれず本人の前で寂しいと言えませんでした。

高校生の時に親に対して変に大人ぶって素直になれなかった麻美子。変に大人ぶって寂しいと言えなかった久美子。本当は全国に行きたいのに変に大人ぶって部活を辞めようとするあすか先輩。

 

みんな高校生でまだ子供なのに変に大人ぶって、本音を我慢して、自分を押し殺す。後悔するのが薄々分かっているのに。

高校生ってこういう物ですよね。大人と子供の中間。

電車で突然泣き出すシーンはそれが凝縮されていました。

 

今回は久美子の成長物語。麻美子の事で後悔した経験はあすか先輩の時に活かされます。

 あすか先輩はなぜあれほど部活を辞めようとしたのでしょうか?

 

 ・本音と建前

人を信じるって難しい。

本音だと思っていたのが建前だったのを知ったら人は傷つく。傷つくのなんて誰もが嫌だ。

しかし他人になる事なんて不可能なんだから、他人の心なんて分かるわけがありません。確かにその人の性格や境遇をある程度知っていたり、付き合いが長かったら想像できますが、悪魔で"想像"です。経験はできない。付き合いが浅い人の心なんて、もし「自分が」その人の立場になったらどう思うかでしか考えられません。

だから他人の言っている事が本音かどうかなんて分かるわけがない。本音と建前が紛らわしい時なんて尚更です。

 

だから周りとの折り合いを付けるのに1番楽なのは、自分を押し殺す事。本音を隠して周りの意見に合わせたり、聞こえの良い意見を言ったり。周りと同じ建前を言っているのが1番楽です。「あすか先輩が部に戻ってきて来て欲しい」それが部内での空気。

 

それ故にその「戻って来て欲しい」という言葉が本当かどうかなんてのはわからないです。部活に戻りたければその言葉を信じるしかありません。たとえそれが周囲との摩擦を生むことになるのだとしても。それは心が強い人じゃないとなかなか出来ません。精神的な消耗も激しい。いろいろな経験をし、大人になるにつれてだんだんそんな冒険はしなくなっていく。誰だって無駄な衝突は避けたい。だから人を信じるのは難しい。

 

「みんな?みんなって誰?

だいたい、そのみんなが本心を言ってる保証はどこにあるの?

『あすか先輩が出た方がいい。』『あすか先輩と吹きたい』

そりゃみんなそう言うよ。だってそう言っとけば誰も傷つかない。」

 

あすか先輩は賢いからこの事を分かっている。自分が部に戻らないのが1番丸く収まると。

分かっているあすか先輩はそれを無視して我を押し通す事ができるほど強くはなかった。心が強くないのです。だから気持ちを押し殺して、自分が傷つかないよう振る舞う。自分が他の部員の立場だったら絶対嫌だ、部の為にならないと言った外的要因を建前に吹部を辞めようとします。

 

心の弱さがこの建前を生み出しています。

 

・心が強い人、弱い人

心の強弱の視点で他の登場人物を見てみましょう。

 

麗奈は心が強い人です。

心が強い人は他人から悪く言われて何とも思いません。確固たる自分を持っているから。少しは揺らぐことはありますが、基本的に悪口くらいじゃあ止まらない。

1期でのオーディションの時の彼女は強かった。自分の技術、そして考えに自信を持っていた。自分こそが正しいと。久美子の支えもあったと思いますが、自分を貫き通せたのは間違いなく彼女自身の強さです。

 

対して久美子は心が弱い人です。

1期の序盤、滝先生が部活の方針を決める為、全国を目指すか、それとも楽しくやるかで手を挙げさせるシーンがあります。

その時久美子はどちらにも手を挙げませんでした。自分の意見を示そうとしない。周りから自分がどう思われるのかをとても気にしているのが分かります。

また彼女は中学時代、先輩を差し置いて合奏メンバーに選ばれ、キツイ悪口を言われました。その事がトラウマになっているせいか、1期の時の夏紀とのやりとりはそれはもうおっかなびっくりと言った感じでした。

 

久美子とあすか先輩はこの心が弱い点でよく似ています。

 

 

久美子とあすか

久美子が北宇治に進学した理由は中学時代の知り合いが誰もいない所で一から始めたかったからです。それは、周りに流される自分を変えたいと思う気持ちがどこかにあったからなのではないでしょうか?

久美子は麗奈と出会うことで変わっていきます。低音パートの仲間にも恵まれどんどん自分を出せるようになっていきます。

 みぞれの時もそうです。中学時代の久美子じゃあそこまで頑張れなかったでしょう。

 

けれど肝心な所で踏み込めなかった。傍観者になってしまった。

「気になって近づく癖に、傷つくのも傷つけるのも怖いからなあなあにして、安全な場所から見守る。そんな人間に相手が本音を見せてくれてると思う?」

同じく他人に踏み込めないあすか先輩にはしっかり見抜かれていました。あすか先輩と久美子はこういう所で似た者同士です。

久美子は止まってしまう。このままでは今までの自分と同じ。

「まああんたもさ、後悔のないようにしなさいよ」

フラッシュバックした麻美子のこの一声が最後の後押しをします。

他人に近づけなかった久美子が境界線を越えた。

だからこそ、心が叫ぶあのシーンがより感動的になるのです。

 

・雑記

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久美子をきつく言いくるめた直後のあすか先輩の緩んだ表情。後輩の久美子を大切に思っている気持ちが伝わってきて好きなカットでした。