いつもの日々

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映画「メメント」 感想 記憶の不確かさ

クリストファー・ノーラン監督による映画。同監督のインセプションがとても面白かったので見てみたという流れです。インセプションの方は誰にでもオススメしやすいSF映画でしたが、今作は全く逆のタイプでした。

 

この映画のポイントは時系列。冒頭のシーンから段々と遡っていくという手法となっており、初見時はえらく混乱しました。冒頭の映像が逆再生されたことからすぐに気付ければ良かったのですがなかなか気付けなかったです。

遡っていくストーリーとは別に、モノクロの映像が所々で挟まれます。主にサミーの話で、こちらは基本的に時系列に沿った内容になっています。

この2つの時系列はラストで交わるようになっており、この映像トリックがこの映画の1番の見所となってます。

 

・物語を遡る

この映像トリックの面白いところは、記憶障害を持つ主人公レナードと同じ状況を体験できる所です。過去の記憶がない所から、今の状況や刺青、自分が残したメモを元に過去を遡っていく。誰が信用できる人物なのか全くわかりません。(結局全員レナードを利用してやろうという悪いやつだったという可哀想なオチ

もし普通に時系列順に映画を作っていたら記憶障害を持つレナードがどのような状況に置かれてるかイマイチ体感しにくかったでしょう。記憶障害を疑似体験するには持ってこいの手法なわけです。

こんなことを思いつけるノーラン監督尊敬します。

 

ただ斬新な手法な故に理解するまで時間がかかり、難しいと感じてしまう人が多いと思います。1度で完璧に理解できる人は普通にすごいと思う。だから冒頭でも触れたように誰にでもオススメできるような作品ではないのが少し残念。

 

・記憶の不確かさ

レナードは家に強姦魔が押し入ってきた際に頭を強打され記憶障害を患います。その後、その記憶障害が原因で妻を亡くしてしまいます。

彼はそのトラウマから記憶を都合のいいように書き換えました。「妻は強姦魔にレイプされて殺された。」「サミーは記憶障害が原因で妻を亡くした」サミーはレナードが保険会社に勤めていた時のお客さんです。レナードは保険金詐欺かどうかの調査をしていました。

不可抗力とはいえ自分が妻を殺してしまった事実に耐えられなかったのです。

記憶を書き換えた後、彼は妻を強姦した犯人を殺します。殺された妻の復讐という大義名分があるため殺人の達成感は思った以上に大きかったのでしょう。笑顔で映る写真からもそれがわかります。

 

復讐の達成感を覚えてしまったレナードは自分のトラウマに向かい合う事ができず、妻を殺した責任を架空の犯人ジョン・Gになすりつけます。彼は殺した事を忘れ、また新しいジョン・Gを探しては殺すのを繰り返します。テディから自分が殺人を繰り返していた真実を聞いた後も彼は全く変わりません。テディが真犯人だと思えるような手がかりをわざと残した上で記憶を忘れ、最終的にテディも殺します。テディに利用されていたとはいえやり過ぎです。

 

記憶はいざとなれば自分の都合のいいように書き換えられるという良い部分、正しい記憶がないと自分が何者かわからなくなってしまうという悪い部分、どちらも感じられる作品でした。